日本一の地鶏を目指す 三重県
雑種強勢の傑作 熊野地鶏
幻の美味軍鶏『八木戸』に伊勢赤どり、さらに、名古屋コーチンの血を加え誕生した、雑種強勢の傑作、熊野地鶏。三重県畜産研究所が十年もの歳月を費やして完成した美味な鶏
血統にこだわる 中型軍鶏 八木戸(やきど)の血を引く
畜産の世界で肉質や味を左右する最大の要素は血統。血筋を超えることは不可能です。その為、先ずは血統の選抜が重要で、数多くの血統の組合せの試行錯誤が、新しいブランドを生みます。
その組合せ、父母は言うまでもなく、祖父祖母にも及びます。
三重県が日本一の地鶏開発を目指すと決めた時、注目したのは、伊勢の国の多気郡下御糸村大字八木戸(やきど)原産の中型軍鶏『八木戸』です。
江戸初期にタイから輸入された闘鶏用の鶏が軍鶏ですが、その闘争本能強化の為の改良により、数多くの軍鶏の血統が全国に広がり、同時に、軍鶏のうまさも浸透していきます。
八木戸は闘鶏練習の稽古相手に使われていました。非常に根性があり、死んでも鳴かないと言われています。スパークリングとかバンタムと言った言葉が、闘鶏由来と聞いたことがありますが、まさに、スパークリング相手の軍鶏が八木戸です。
八木戸は、また、非常に肉がうまく、珍重されてきましたが、戦後、闘鶏の衰退と共に、絶滅の危機に追い込まれました。それを今回の新ブランド鶏開発プロジェクトもあって、多くの人々の努力で復活をしました。
炭火であぶるのが一番シンプルにして美味かも
軍鶏の肉質に脂を乗せ、さらに磨きをかける
名古屋コーチンの血
闘鶏用の軍鶏は美味ですが、いわばアスリート。その為、脂の乗りは良くないです。
そこで、三重の銘柄鶏の伊勢赤どりを掛け合わせ、優れた♂を選抜し、そこに極めつけの名古屋コーチン(日本三大地鶏)を掛けて、熊野地鶏が生まれました。
ある意味、良いとこ取りの地鶏です。
素晴らしい熊野の環境と
こだわりの餌が鶏を育てる
日本有数の規模を誇る丸山千枚田
正直言って、熊野は田舎
その代わり、深い山と美しい川と海に恵まれる
その恵みを最大限享受して育つのが熊野地鶏です。
熊野地鶏は1平米あたり8羽以下の飼育密度と120日もの日数を掛けて育てられます。
一般的な地鶏の基準よりもずっと高いレベルです。
餌にもこだわりがあり、抗生物質を一切含まない安全な飼料のみを与えています。
棚田百選にも選ばれた「丸山千枚田」で作られた飼料用米、熊野市だけで栽培されている香酸柑橘「新姫」の果皮粉末。熊野ならではの自然の恵みが惜しげもなく与えられ、輸入飼料だけに頼らないようにしています。
飲み水は熊野古道近くに湧く清らかな水。まさに、至れり尽くせりです。
中抜きをローストすれば、一同大興奮は間違いない
また、新姫の果皮を食すことで、肉には生活習慣病のリスク低下の可能性が示唆されている機能性成分「β-クリプトキサンチン」が蓄積することもわかっています。※三重県畜産研究所の研究結果
美味しい上に、機能性成分も含まれるとは、まさに日本人にうってつけの食材です。
赤身はもも肉で中間が胸肉 一番薄い色はささみ
ゆっくり育つ鶏はうまい
明確な定義はないですが、一日あたりの体重増のペースが遅い鶏は美味です。
例えば、比内地鶏は平均で約13g、名古屋コーチンは約16g、さつま地鶏は13g、みやざき地頭鶏は約21g。錚々たる美味鶏は一般に成長が遅いです。
熊野地鶏のすき焼きもうまい!卵が絡んで何とも魅力的
熊野地鶏はそこまでではないものの、約23gです。ブロイラーは約100gと言われています。
それだけ早く大きくなる反面、肉の味が弱いのは当然です。
熊野地鶏の癖がない美味しさは、その血筋の良さ(氏)と、長くゆったり、じっくりと、こだわりの餌で育つ(素性)ことで生まれます。
(株)食文化 代表 萩原章史