天然鮎 食べ比べ
鮎は古事記に鮎釣りの記述があるほど、古くから日本人に愛されてきた美味。 特に清流に育つ初夏の小ぶりな鮎は、多くの食通たちを唸らせてきた旬の逸品。
アユ科アユ属の鮎は日本を代表する魚。古くから釣りの対象、食材としてはもちろん、多くの神社の神事にも登場するほど日本人との繋がりは深い。
因みに長良川の鵜飼の鵜匠は職名を宮内庁式部職鵜匠と言い、宮内庁御料場で獲れた鮎は皇室や伊勢の神宮へ奉納される。
全国各地の淡水魚食文化を支え、調理法や盛り付けにも強いこだわりがあるのも鮎。稀代の美食家、北大路魯山人も鮎には強いこだわりがあったと伝えられる。6月の骨が柔らかな若鮎を頭から食し、はらわた・身・皮を同時に味わう食べ方が一番と、鮎の食べ方の極意を著している。
子持ちの鮎には子持ちの魅力があるのも事実であるが、やはり、若鮎の芳香漂う、ほろ苦いはらわたを食すのが一番である。
鮎と言えば清流。それもダムが本流にない川が良いとされる。理由は、大雨のたび、自然に川底が洗われ、落ち葉などのごみが流され、太陽光線が水苔の生える石まで届くからである。
今回の阿仁川(秋田県)・四万十川(高知県)・高津川(島根県)には、大きなダムがなく、美味な鮎に必須の上質な水苔が生える清流である。
上質な塩と炭火を用意して、塩焼きで食すのが一番ではあるが、背ごし、洗いも美味。少し面倒ではあるが、素焼きにして天日で干した鮎は、炊き込みご飯との相性が抜群。昆布出汁(味付けは日本酒と薄口醤油少々)でご飯の準備をして、炊く前に再度あぶった鮎を入れて炊けば絶品。天然の極上鮎はどんな料理でも美味しくなるのが素晴らしい。
阿仁川の鮎
またぎの里 秋田の阿仁川上流の鮎 水揚げが極めて少ない幻の美味鮎
阿仁川中流の根小屋堰堤を飛び越え、上流の渓流域に辿り着き、上質な苔を食して育った鮎。急峻な阿仁川の谷底まで鮎釣りの道具を携え、釣り上げた鮎を持ち帰るのは重労働。その為、地元の釣り人以外の口に入ることは極めて稀。阿仁川の鮎はまさに幻の美味鮎。
鮎釣りのポイントまで辿り着くこと自体が困難。その為、釣り人は非常に少ない。
高津川の鮎
釣り鮎を一晩水槽で泳がせ、上物を吟味し、活け締め直送。
島根県の高津川は日本一、二を争う清流。特に竿釣りの天然活〆の鮎は非常に上質で、多くの著名な料理屋が使っている。初夏の鮎は余分な脂がなく、ほろ苦いわたの風味が特に際立つ。骨と身とわたが、混然一体となる究極の味は頭からが一番。
焼き鮎を楽しみ、食べきれない焼き鮎で、炊き込みご飯を作っても美味。塩焼きでも素焼きでも、しっかり焼いて、天日で干して生臭さを消すのがコツ。
四万十川の鮎
言わずと知れた天下の清流 四万十川友釣りの天然鮎は初夏の美味
友釣りと火振り漁がある四万十川の鮎。やはり、初夏の友釣りの鮎が勝るのは言うまでもない。鮎を美味しく食べるには、串打ちと火熾しが重要。炭の遠火の強火は、上質な鮎の身はもちろん、皮と骨も美味しくしてくれる。
多くの瀬と淵がある四万十川は、水苔の餌場と増水時の避難場所(淵)を備える、鮎にとって素晴らしい住処。
琵琶湖産姉川の鮎
鮎と言えば甘露煮や塩焼きにして食べる大振りのものを想像するが、琵琶湖で一生を終える鮎は、一般の河川の鮎と違って、成魚でも7〜8センチぐらいにしか育たない。一般河川の鮎よりもずっと小さいが、上品な脂があり、内臓の微かなほろ苦さも心地良い。
球磨川の鮎
熊本県の球磨川は、富士川、最上川と並ぶ日本三大急流の一つ。尺アユと呼ばれ、国内でも特に大きくて美味しい鮎が育つことで有名である。急流で鍛えられ引き締まった身は、上品な味わいと独特の風味を持ち絶品。炭火で焼き上げ、香ばしく香る皮の余韻を楽しみたい。
天候等により鮎が獲れない場合、お届けにお時間がかかる場合がございます。予めご了承ください。
(文・萩原章史 撮影・八木澤芳彦)