昔から、長岡の信濃川左岸、王寺川地区で栽培されてきた肴豆 稲刈りの疲れを癒す為、収穫の神が民に下さったとしか思えない、比類なき美味な豆 毎年、稲刈りの季節 ほんの10日間の短い旬。その前も、それ以降も、独特な香りも風味も発揮されることはない。まさに、稲刈りの疲れを癒す為に存在するのが、肴豆です。 今では生産量が少なく、長岡の外に出回ることは極めて稀。まさに幻の枝豆の名にふさわしい肴豆。その茹で上がりの香り、食味、絶品です。 |
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どうもはっきりした由来はわかりませんが、今から40年ほど前の昭和40年頃、秋田の男鹿半島あたりから伝わったとの説もあるし、それ以前からあったとの説もあります。いずれにしても、長岡の土地、それも田んぼに植えた肴豆だけが、芳香で甘く、美味な枝豆になります。
在来種(品種改良されたF1種ではない)の大豆は、同じ豆をまいても、土地が違うと味に違いが出るのが一般的です。長岡の肴豆も同様。他の土地では同じ味や香りを出すことはできません。 |
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肴豆はいくら早く種まきしても、早く収穫することは出来ません。何故なら、肴豆は日照時間により、開花・結実するので、結局は、ほぼ同じ時期に収穫になります。偶然と言えますが、多くの枝豆の中で、肴豆だけが長岡の稲刈り時に収穫されます。太い幹 しっかりした根 根瘤菌が活躍します。私が訪ねたのは、長年、大豆を作っている、農家さんの園地でした。ちょうど、収穫祭のイベントで、肴豆の餡を使った大福を作るそうで、まだ、本番よりも数日早いものの、約50kgの肴豆を収穫する日でした。この農家では肴豆を、毎年、色々な場所に植えるそうですが、水田に植えた場合が一番美味しいそうです。 子孫を残す在来種の豆。その根も枝ぶりも無骨ですが、豆の生命力を感じます。
長岡野菜の肴豆は 茶豆ではない です。長岡の肴豆は緑豆の一種です。その為、鞘の内側の皮が薄く、いくら食べても食べあきがしません。茶豆のように、中の皮が厚いと、口に残りますが、肴豆は食べ始めると 『やめられない、とまらない』 状態になります。厚さは8ミリがベスト、関東などの他地域の標準的な厚さ10ミリとの違い2ミリの差が、美しい色・香り・甘みを発揮させます。新潟人はたくさん枝豆を食べます。日本一と言っても過言ではないです。皆さん、平気でどんぶり一杯食べます。 関東などの枝豆の規格は、厚さ10ミリが標準のようですが、新潟では8ミリです。この2ミリの違いが、味と香りと色に大きく影響します。まさに新潟人のこだわりです。 ご注意! パンパンに入った枝豆が好みの方は、肴豆を買わないでください。 |
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到着した枝豆は出来るだけ早く茹でてください。保存したい場合は、茹でてから冷蔵または冷凍してください。※肴豆は冷凍しても甘みが残ります。香りが命の肴豆 水も気にして欲しい。枝付きの場合、豆を切る前に、大き目の鍋に水(浄水器の水かミネラルウォーターがベスト)を入れ、火にかけます。沸騰するまでの間に、豆を枝から切り取ります。※水道水の場合は、少し長く沸騰させ、カルキ臭を飛ばしておきます。 キッチンバサミで枝から肴豆を切り取ります。少し鞘を切ると早く茹だる上に、塩気が程よく豆に馴染み美味です。枝なしの場合でも、鞘の付け根を切ると茹で上がりが早くなり、塩気も馴染みます。 切り取った肴豆をボウルなどに入れ、あら塩をたっぷり振り、よく揉み、水で流します。 完璧な茹で方を目指すのであれば、熟し具合ごとに、豆を3段階くらいに分けておきます。お湯に塩を入れ、熟した豆から茹で始め、少し間をおいて、未熟な豆を投入すると、パーフェクトです。台所中に甘い香りが漂います。 |
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今回、私は2軒の農家を尋ね、少し早めの肴豆を頂戴しました。どちらの女将さんにも茹で方を尋ねましたが、お二人とも 『茹でる時につまんで食べて、好みの具合に仕上げる。』 とおっしゃっていました。 流しにざるを用意し、鍋が再沸騰後、4分後くらいから、つまみ食いを始めます。 『うーん このくらいが好き!』と思ったら、間髪いれず、ざるに上げ、お好みで塩を振り、扇風機か団扇で風をあてて、温度を下げてください。 ※多少、長く茹でても不味くなることはないです。要は好みの問題。ご飯と同じです。固めが好きな人も、柔らかめが好きな人もいます。枝豆の好みは千差万別です。 美しい緑、高い香り、濃厚な味、かと言って、茶豆のような癖はない。美味な豆です。 (文・株式会社 食文化 代表取締役社長 萩原章史) |