Signifiant Signifié シニフィアン シニフィエ
炊きたての
南魚沼産コシヒカリが
イメージです
シニフィアン シニフィエ
志賀勝栄シェフの『パン ド ミ』
志賀勝栄シェフです。
「私のパン ド ミは、炊きたての南魚沼産コシヒカリをイメージして作りました。上質なご飯のように毎朝召し上がっていただきたいパンです」と、志賀勝栄シェフは語ります。驚くほどに、もっちりとした食感です。噛むほどに旨みが湧いてくる、奥行きのある味わいが傑出しています。
シニフィアン シニフィエの志賀勝栄シェフは、日本を代表するブーランジェ(パン職人)です。日本のブーランジェの世界では“パンの神様”と称されるほどです。とくに、志賀シェフが切り拓いたパン生地の低温長時間発酵の技は、多くのブーランジェに継承されています。
これがパン ド ミです。
志賀シェフのパン ド ミの材料は、小麦粉、酵母、塩と水だけです。生クリームまで使う、近年人気のふわふわ系食パンとはまったく違います。自家製酵母と技と時間で、上質な小麦粉の旨みをとことん引き出します。小麦粉は、北海道産など2種類の国産とフランス産のオーガニック小麦を配合します。酵母はレーズン種とポップ種の2種。水は海洋深層水を使います。「炊きたてのご飯のイメージに近づけていったら、この材料と配合にたどり着きました」と、志賀シェフは語ります。ちなみにパン ド ミのミ(Mie)とはフランス語で中身のこと。皮を食べるバゲットに対して、中身を食べるパンという意味でこの名前がついています。
粉の風味を引き出す低温長時間発酵。
志賀シェフのパン ド ミの魅力はもちもちっとした食感です。この力強い食感を出すため、生地は18℃前後(2024.3現在は20℃)で15時間かけて発酵させます。志賀シェフは「パンの発酵はチーズやワインの熟成と同じです。高温だとバクテリアが強くなり、低温だと乳酸菌が減ります。18℃前後の温度帯で長時間発酵すると酸味と甘みが絶妙なバランスになるのです」とお話します。材料に負担をかけず、素材の力を引き出すことで、もちもちとした食感と旨みを生み出すことができるのです。
大きな気泡は美味しくできた証です。
志賀シェフのパン ド ミの生地づくりのもう一つの特徴に水を多く加えること(多加水)があります。「生地の水分を多くしますとデンプンがα化しやすく、焼成時に温度が早く上がるため、焼き上げる時間を短くすることができます。短時間で焼くことで、通常は水分とともに飛んでしまう香りと味が、大きな気泡とともにパンに残ります」と、志賀シェフ。この気泡の大きさも志賀シェフのパン ド ミの美味しさの証なのです。
志賀シェフのパン ド ミをぜひトーストで食べてください。香ばしさが部屋中に広がります。外はパリパリで、中身は驚くほどもっちりとした食感です。にもかかわらず歯切れはよく、噛めば噛むほど小麦粉の旨みが感じられます。
志賀シェフのパン ド ミづくり。
しなやかに伸びる艶やかな生地です。
ご覧ください。こちらの画像がパン ド ミの生地です。志賀シェフの生地はこんなに伸びます。なめらかで柔らかく、パン生地とは思えないほどのものです。しなやかに伸びる艶やかな生地が、志賀シェフの美味しいパンの特徴です。
材料は小麦粉、酵母、塩と水だけです。
画像は、小麦粉、湯種(小麦粉を水から火にかけて練ったもの)、酵母、塩、水です。小麦粉は北海道産など2種類の国産とフランス産のオーガニック小麦を配合しています。安心して体内に入れられるものを探した結果、今の小麦にたどり着いたそうです。酵母はレーズンからおこしたレーズン種と、ホップやジャガイモなどからおこしたホップ種の2種類の自家製酵母を掛け合わせて使います。この酵母により奥行きのある旨みが生まれ、炊きたてのご飯のような味わいになるそうです。
艶やかで美しい生地です。
材料をミキサーで40分ほどかけて捏ねます。志賀シェフのパン ド ミは、小麦粉に対して約90%もの量の水を加えます。この水分の多さがもっちりとした食感を生み出します。
光沢のある美しい生地です。気泡もピカピカしています。志賀シェフ曰く、「この輝きはデンプンが美味しくなった証拠」だそうです。絹のようになめらかで、伸びもよくとろけるような生地です。
低温で15時間発酵させます。
取り出した生地をカットし、18℃前後の温度帯で、15時間かけてゆっくりと発酵させます。
15時間が経過しました。
生地は1.5倍ほどの大きさになります。表面もなめらかさが増します。時間をかけて素材の美味しさと、パンの力強さを引き出します。
生地を成形し、型に入れます。
生地はとても繊細です。成型はやさしく短時間で行ない、パン ド ミの型に入れます。水分の多い生地は、できる限り触らずに成形・焼成するのでガスが抜けにくく、不揃いで艶やかな気泡が生じます。この気泡をつぶさずに焼き上げるため、蓋をせずに焼き上げます。
オーブンで焼成します。
240℃のオーブンで30〜35分かけて焼成します。パン生地に含まれる水分の影響で、パンの温度が一気に上昇します。内側は100℃、外側は150℃です。この温度が良いパン作りには最適だそうです。
焼き上がりました!
香ばしさが広がります。外はパリッ、中はもっちりとしたパンが出来上がりました。製造時間は全工程でなんと20〜22時間です。たいへんな手間と時間がかかります。焼き上がったパンは、マイナス40℃近くの冷風で急速冷凍ができるショックフリーザーを使い、焼きたての風味そのままを冷凍します。
リベイクしてお楽しみください。
冷凍でお届けします。食べる際は、袋を開封せずに常温で解凍をしてください。所要時間は2時間から2時間30分が目安です。3cm程度の厚さに切り分け、両面にまんべんなく霧吹きをかけて水分を与え、約220℃のオーブントースターで4分ほどを目安に温めます。
まずは何もつけないでお召し上がりください。上質なご飯を食べるのと同じように、小麦粉の旨みそのものが豊かに感じられます。もちろん、バターやジャムでもお楽しみいただけます。
温め方は、炭火で両面を30秒ずつサッと炙るのも志賀シェフのおすすめです。焼きおにぎりを思わせる、少し焦げた匂いがたまらなく良いそうです。和食にもよく合います。
文・林麻実
撮影・川島英嗣