陸奥湾は類まれな豊かな海
ベビーホタテを食べて応援!
津軽半島と下北半島に囲まれた閉鎖性海域である陸奥湾は
古代から脈々と地域に恵みをもたらしてきた。
約200本もの川が山からの豊富な栄養をもたらす。
湾内で海水と地下水の真水が混じり合い、多様なプランクトンが発生する。
内湾は波も穏やかでだ。
ここはホタテ養殖発祥の地でもあり、日本ホタテ産業の要。
しかし、昨今のホタテを取り巻く情勢は厳しい。
ベビーホタテを食べて応援しよう!
陸奥湾は、北海道に次ぐ大産地
古くからホタテガイが生息し、10〜20年に一度の大発生を繰り返してきました。江戸時代では中国への俵物として幕府の財源になりました。
現在陸奥湾のホタテ生産量は北海道に次ぐ大産地です。県全体生産量の50%は平内町で育てられ、その平内町は「ほたて養殖発祥の地」です。
昭和40年頃から、自然発生に依存しない安定生産を目指し「獲る漁業」から「育てる漁業」に変化しました。
全体の8割を占める!
陸奥式養殖はベビーホタテが主流
間違われやすいですが、
ベビーホタテは間引いているのではなく、あえて育てられています。
その証拠に、ホタテ生産量の8割がベビーホタテです。
陸奥湾は閉鎖性海域であり、波が発生しにくいこと、海底が浅いこと等から、海水温が上がりやすい環境にあります。ホタテは海水温が低い状態を好むため、長く育てることでリスクが高まることから、青森県はベビーホタテで勝負しています。
4〜7月に玉ねぎ網の採苗器を使って稚貝(ラーバ)を採取し、7月〜翌年4月ごろまで垂下式篭養殖をします。
さらに半年(生後1年半)ほど経過した半生貝がベビーホタテとして出荷され、
残りの2割がさらに3年かけてさらに大きく育てます。
青森といえばベビーホタテ!というわけです。
なお、北海道オホーツク海では地撒き式が導入されています。
地撒き式の場合、稚貝を育てた後は海に放流し、5年間砂地で自由に動き回れる環境で筋肉質に育ちます。
ベビーホタテは扱いやすいボイル済で流通。
ベビーホタテは旨みがのる4〜7月にかけて、旨み成分を逃がさないよう蒸気で加熱した後に、急速凍結がかけられ出荷されます。加熱済みなので、下処理不要。そのまま美味しく食べられ、殻もないのでごみの心配も不要。今の時代にも合う簡単便利な食材です。 加熱していない貝柱は時間をかけて解凍しないと、細胞が壊れ白濁した液体となって旨みが逃げてしまいます。 ベビーホタテはそうした気を使わずに済むお手軽便利な食材なのです。
養殖、加工、ぜんぶやる。
昭和42年創業、山神は漁師が取り仕きる生粋のホタテ屋
今回ご用意したのは(株)山神のもの。
多くのホタテ屋は分業制で効率を重視しますが山神は違います。
今も社長自らが漁師として海に出て、水揚げしてすぐの原料を自社工場で一気に加工します。
水揚げ後、約5分で工場に新鮮なほたて貝が運び込まれ、すぐに加工工程に入ります。
滅菌海水でホタテを洗い、旨みを逃さないよう、絶妙な加減でボイル加工を行い冷凍されます。
その間、最短約90分です。
スピードが命。本当の美味しさを届けたいという心意気で、蒸したてのホタテを日々丁寧に加工しています。
ホタテを取り巻く情勢、ここ数年が勝負
北海道の地撒き式の水揚げは、八尺と呼ぶ爪付きの網で砂地をかき上げ行います。殻付き貝を凍結し、これまでは中国へ輸出し、剥き貝に加工してからアメリカ等に流通していました。中国による日本産水産物の輸入停止はこの部分が大きく影響しました。剥き貝柱の状態に加工しないことには、出荷できないのです。しかし国内にその技術と人手がありません。国をあげて、新たな加工先を模索しているところですが、すぐどうにかなるものでもなく、空きの冷凍庫がなくなるほど倉庫に在庫がたまるという状況が発生し、結果、国内流通が主体だったベビーホタテにもしわ寄せがきています。
さらに2023年は海水温上昇も大きな問題となりました。猛暑の影響で湾内の海水温が高くなり、水揚げの前に死ぬ「へい死」が大量発生したのです。こちらも喫緊の課題です。
食べて応援!陸奥湾のベビーホタテ
特にお子さんが小さいご家庭は、生の冷凍ホタテよりも、解凍の手間のない小さなベビーホタテのほうが使い勝手が良いです。筋肉がさほど発達しないので、貝柱の柔らかさも人気です。
そのままは勿論、身をほぐしてグラタンやクリームコロッケでも良いですし、中華風に青菜と炒めても美味。フライやカレーの具材でもお楽しみいただけます。春先ならタケノコとあわせて土鍋ご飯も良いでしょう。木の芽を添えればぐっと華やかになります。
冷凍庫にしのばせておけば、便利にお使いになれる食材です。
(株)食文化 川口