〜中国家庭料理 楊 池袋〜
お母さんから受け継いだ楊家伝統のお楽しみ
『楊さんの春節の餃子』
四川省成都出身の楊さんが、春節に子供の頃から食べてきた、 豚肉花椒餃子、酸菜餃子、紅油水餃の3種セットです。
春節のお祝いに餃子は欠かせません。
中国の正月である春節は、日本の正月同様、家族や親せきが集まり食事を楽しみながら新年の訪れを祝います。その食卓に欠かせないのが餃子です。餃子の形が昔の中国の貨幣である元宝に似ていることなどから、春節に餃子を食べると富をもたらすという願いを込めたのです。
今回は四川省成都出身の「中国家庭料理 楊(ヤン)」の楊さんに、楊家伝統の餃子をつくっていただきました。豚肉花椒餃子、酸菜餃子、紅油水餃(ホンヨウスイジャオ)の3種です。これをセットで送っていただきます。
家族総出で餃子を包みました。
「春節の前日に家族揃って300個くらいはつくるよ。だいたい3種類かな。春節には近所の人も寄って食べていくから、ふだんの白菜の餃子ではなく肉をたっぷりと入れた豚肉の餃子にする。花椒をきかせるのがうちの味だね。
あとは、お酒を飲む人が好きな発酵させた白菜の酸菜を使った餃子。真っ赤なスープで食べる紅油水餃も、赤は中国ではおめでたい色だから春節によく食べたね」と、楊さん。餃子の中には、ピーナッツや硬貨などを入れて、運試しをしていたそうです。
皮はもちもちとしてコシがあります。
楊さんの餃子は水餃子。皮がもちもちとしてコシのあることが特徴です。餡はたっぷり。素材は豚肉と白菜だけとシンプルにし、さまざまな香辛料を使って奥深い味わいに仕上げます。
「皮は中力粉の中に少量の油と塩を加えてよく練って一晩ねかせることが大事。餡を包む前にもさらに練るからもちもちとした生地になる。冷めても皮がだれないから美味しいよ。ゆでて残った水餃子は、焼いて食べると美味しい」
と、楊さん。楊さんの餃子は、味付けもしっかりとしているので、そのまま食べても十分に美味しく仕上がっています。ゆでてから焼く、中国式の焼き餃子もおすすめです。
1、豚肉花椒餃子
豚肉たっぷりが春節の味。
豚肉の餃子は、楊さんが子供の頃は、春節だけのご馳走でした。ふだんの水餃子の2倍は豚肉が入っていたそうです。今回の餃子も豚肉を主役に、野菜は白菜が入ります。味付けは、塩とごま油で、醤油などのタレをつけなくても美味しくいただけます。香辛料は、赤と青の2種を使う花椒がきいています。
ほかに、八角、ウイキョウ、ガランガル、オレンジピール、黒胡椒、ナツメグ、シナモン、生姜、甘草、シャジン、クローブ、ビャクシも入ります。漢方の素材である香辛料を多種使うことで、寒い冬に体を温め、凍傷を防ぐという意味もあったそうです。
黒酢やラー油などでどうぞ。
楊さんの家では、水餃子はそのまま何もつけずに食べるか、黒酢が定番だったそうです。「日本人が好きな、醤油と酢とラー油を合わせたタレで食べても美味しいよ」と、楊さん。ゆでたては肉汁がほとばしり出るので、一口で食べるか、レンゲで受けていただくのがおすすめです。
2、酸菜餃子
発酵白菜の餃子はお酒に合います。
「春節にお酒を楽しむ大人のためによくつくっていたのが、発酵させた白菜の酸菜の餃子です」と、楊さん。酸菜は、酸味と旨みに特徴のある漬物です。この餃子は、酸菜を生かすために花椒は効かせてありません。お好みで、醤油・酢・ラー油を合わせてお召し上がりください。
3、紅油水餃
赤色がめでたい、体が温まる餃子。
ピリッと辛い紅油でいただく餃子です。紅油に餃子のゆで汁を加えて、温かいスープにしていただくのが、冬の楊家のご馳走だったそうです。「赤は縁起がいいし、スープにすると体が温まるからね」と、楊さん。餃子は、椎茸餃子です。豚肉と椎茸と長ネギが具材です。椎茸の旨みを生かすため、こちらも花椒はきかせてありません。
紅油はそのままタレにもなります。
これが紅油です。材料は、酢、ごま油、ラー油、鶏ガラ、塩、山椒、砂糖など。ピリッとはしますが、水餃子との相性がいい甘辛い味付けです。これを、タレにして食べてもいいですし、皿に盛った水餃子にかけると美しい一皿になります。
レンゲでスープとともに。
スープの表面が油の蓋になるので冷めにくく、寒い冬にぴったりの一品です。「熱々のスープで食べるとお腹がいっぱいになって、体もあたたかくなって幸せだよ」と、楊さん。餃子をゆでる際に、春雨もゆでて具材にするのが楊さんのおすすめです。
トッピングも楽しい餃子です。
パクチー、長ネギ、ニラ、干しエビなどをご用意いただいて、適宜足しながらいただくのも美味しい餃子です。
紹興酒などのお酒もいけます。
3種の違う味わいが楽しい、楊さんの春節の餃子セットです。紹興酒のほかにも、本格焼酎やウイスキーハイボールなど、お好きなお酒を合わせてもお楽しみいただけます。
文・地子ひかり
撮影・八木澤芳彦