縄文時代の貝塚から鴨の骨は
多数出土している
『本朝食鑑』 にも
「たいていの真鴨は味が最も美脆で脂が多く、これを上品としている」と記されている
古式の網漁で真鴨を獲り、
窒息させて、血を肉に漲らせる
骨も内臓も肉も血も、
全てを食べるのが礼儀
江戸の書物 『料理物語』 に
登場する真鴨料理
「汁、骨抜き、煎り鳥、生皮、刺身、なます、こくしょう、串焼き、酒びて、その他いろいろに用いる」
今でも通用する品書きだ。当時も高級食材で年末の贈答品として珍重されていた。鴨の骨を包丁で叩いてツミレにした鴨叩きは人気があり、汁には千住系の太葱が必須だったから、「鴨が葱をしょってくる」という言葉が生まれた。
寒い冬は燗酒が良いから、白い首が長い徳利が重宝され、『酒は白鳥 鍋焼きは鴨に葱』 と言われていた。
江戸の人々の食文化は現代よりも凄いかもしれない。
琵琶湖周辺に残る
日本の鴨食文化
骨を叩いたツミレは
滋味あふれる
天保年間、鴨の専門店が商いを始めたほど、琵琶湖の湖北の町、長浜は鴨料理で名高い。
昔は琵琶湖の漁師が鴨を獲っていたことから、今でも魚屋で鴨は売られている。
中でも、明治38年創業の魚三には極上の天然鴨が集まり、その品質は高く評価されている。
※現在は新潟産の網漁の天然鴨
この鴨鍋は全部揃った鍋セットではない
昆布と鰹節で濃い出汁を取り、日本酒と塩と薄口醤油と少量の味醂で味付けをした、鴨鍋用の割り下を自分で作る。
野菜は九条葱系の青葱。セリは秋田の三関セリを一緒に楽しみたい。浅い鍋に2センチほど割り下を張り、先ずは鴨の骨を叩いて作ったツミレを丸めて入れ、割り下をパワーアップする。
※魚三特製の鴨鍋のつゆもある
鴨の皮・もも肉は煮込み、
内臓とささ身と胸肉は
シャブシャブ
ツミレに続き、脂をまとう皮と腿肉も加える。良い脂と味が割り下に溶け出す。
その汁の海に葱と芹を入れ、火を軽く煮立つくらいに調整し、内臓と野菜を楽しむ。
砂肝、レバー、ハツは深紅の個性派で、味が濃くてうまい。
芹と葱も煮込まないで、少しずつ投入するのが、美味しく食べるこつ。
次に、胸肉を鍋に入れるのだが、必ず野菜の上に乗せ、軽くシャブシャブして、芹や葱と一緒に口に放り込むのが断然うまい。胸肉の表面が少し変色すれば、それで十分。決して煮込まない。汁が煮詰まれば、割り下と少量の水で調整する。
〆は餅が合う!太いうどんも美味だ。余りに鴨汁が濃厚で雑炊は合わない。
食文化 代表 萩原章史
萩原章史
1962年1月23日静岡県島田市生まれ。大学卒業後、大手ゼネコンに勤務。中国・アメリカなどを中心に13年を海外で暮らす。2001年、株式会社 食文化を起業。
食のちからで日本人を元気にすることをミッションに掲げ、こだわりのグルメサイト「うまいもんドットコム」「豊洲市場ドットコム」を開設。