誰かに語りたくなる完熟フルーツを作る
“fun農業”中村太士
長野県長野市でとても魅力的な農業を営む中村太士さんです。
8町歩(約8万平方メートル)という広大な耕作地で、多彩な作物を育てています。中村さんは自らの農業を“fun農業”と銘打って、農業を愛し楽しみながら高品質な作物を生み出します。
植物の生理に合わせて健康的に育て、こだわりの完熟栽培で仕上げます。時間と手間暇をかけて生まれる作物は、食べる側も楽しくなるほど、美味しくて独創的です。
地域の人々だけでなく、著名なアーティストも中村さんの農業にほれ込み賛同しています。
中村太士さんの生み出す、多彩な作物と美味しさをお楽しみください。
長野県産フルーツの
本当の美味しさを伝えます
長野県は、海から離れた内陸に位置した平均標高1000mを超える山岳地帯です。その環境が大きな寒暖の差を生み作物の味わいを高めるため、果樹栽培に適しています。歴史的にも、明治時代から始まったリンゴ栽培を始め、ブドウ、桃、プルーンなど多種多様な果物を世に送り出しています。地域には農家直営の直売場がいくつも立ち並び、遠方からも多くの人が押し寄せます。
しかし長野県の果物の魅力は東京圏にはまだ十分に伝わっているとは言えません。物流網が他県に比べて後発だったことも一因で、なかなか情報が広がらなかったことや、名古屋や大阪への輸送が盛んだった事もあるのでしょう。加えて、流通に時間がかかることで、地元で消費されるよりもずっと未熟なまま出荷される作物も少なくありません。
中村さんは地域の仲間をまとめ上げ、「完熟栽培」を実践することで長野県産フルーツの本当の美味しさを伝えようとしています。
誰かに
語りたくなるような、
「完熟フルーツ」
中村さんのフルーツは「完熟栽培」が基本です。
長期間樹にならすことで栄養を高め、果実本来の美味しさを実現します。その分流通性が落ちてしまうため、一般の小売店に並べることはできません。加えて、流通に時間がかかることで、地元で消費されるよりもずっと未熟なまま出荷される作物も少なくありません。
例えば長野特産の硬い桃「ワッサー」は頂点部の果皮にしわが寄り見た目が悪くなっています。しかし、これは果肉が果皮を押し上げるほどに充実した証拠で、果肉は緻密で甘さも格段に乗った美味しい果実となっています。加えて、流通に時間がかかることで、地元で消費されるよりもずっと未熟なまま出荷される作物も少なくありません。
広大な農地を持っているとどうしても大口の流通に頼りたくなりますが、中村さんは直売を中心にファンを育ててきました。一つ一つの果実を手間暇かけて美味しく仕上げることで「中村さんの果物は美味しかった」という口コミを生み出し、少しずつ広げてきたのです。「誰かに話したくなるくらい美味しいものを作るのが目標です」と中村さんは語ります。
高い樹に仕立てることで
より味を高めます
更に技術面も美味しさを裏打ちします。樹を高く作ると、栄養を吸い上げる力が強まるため果実の味の向上につながります。しかし、高所の収穫は大変な手間暇がかかるため生産者によっては樹を低く仕立てます。そんな中で中村さんはひときわ高い樹を仕立てます。桃であれ林檎であれ、脚立を使い手間を惜しまず収穫作業をします。
格別に美味しい中村さんの果物は、こういった製品からは見えない努力からも生まれるのです。
収穫タイミングは
人の手で見極める
完熟のサインは果実それぞれ。中村さんは果実に優しく触れて熟度を確認します。絶妙な違いを感じとる、まさに職人技で1玉1玉収穫をしていきます。写真はプルーン。色が深まってブルームもしっかり出ていますが、柔らかさが足りなければ収穫しません。本当に美味しいものだけをお客様に提供したい。格別のこだわりが込められています。
お客様の好みに
応える多彩な品種
中村さんはワッサー約10種類、黄桃約5種類、白桃約3種類、プルーン約10種類、リンゴ約20種類という多くの品種を同時に手掛けます。そのすべてに完熟栽培などのこだわりを込めて仕上げています。
リンゴはとことん甘くコクのある「あいかの香り」、ほかにない完熟クッキングアップル「グラニースミス」や、祖父から受け継いだ樹齢50年以上の「原種紅玉」などなど、日本全国で数人だけでも「すごく欲しい!」と思えるような多彩な作物を手掛けています。
地域からも
信頼される発想力で
チャレンジを広げます
中村さんの人となりを伝えるエピソードがあります。
2019年の千曲川の氾濫により、多くのリンゴの樹が浸水してしまいました。その被害を救済するために、中村さんは先頭にたって片付けや伐採を進めました。また伐採したリンゴの樹を薪にして全国に販売するというアイデアを実践。リンゴの薪は煙が少なく燃焼効率が良いとあって多くの共感を生み、今では「りんごの灯火(あかり)」という新しい薪ブランドを生み出すに至りました。
そんな中村さんは地元の方々の信頼も厚く、高齢の農家から土地を耕作して欲しいと頼まれ、すべて受けていくうちに広大な耕作面積になってしまったと言います。
自分も楽しく“fun農業”
多くの作物を育てながら、地域の期待を受ける中村さんですが常に忘れないことがあります。
それが「楽しんでやること」=“fun農業”
大好きな農業を心から楽しむために農場も丁寧に整備されていて綺麗です。出荷場も明るく広く、福利厚生のために大画面モニタを自ら設置しました。休み時間には作業をされている方たちと一緒に動画も鑑賞できます。電動スクーターで農場を行き来して、スマートな農業を楽しみます。
そんな中村さんの後ろ姿を見て、お子さんたちも自然と農業を手伝うようになったと言います。「自分が一番楽しまないと!」中村さんは語ります。魅力的な農業から生み出される、美味しい完熟フルーツをお楽しみください。