全国屈指の鱧の漁場
愛媛県伊予市双海町
伊予灘の活〆鱧
鱧の水揚げ量で
全国一を争う下灘漁港
伝統的な漁法で
生きたまま水揚げする
鱧(ハモ)は瀬戸内海などの西日本で多く獲れる魚で、古くから京都や大阪などで鱧の食文化が発展してきました。
鱧の産地としてはあまり知られていないのですが、愛媛県伊予市双海町下灘の下灘漁港(豊田漁港)では、年間約400トン(※2017年実績)の鱧が水揚げされています。これは単一漁港としては日本トップクラスの水揚げ量を誇る産地です。
ところが、産地市場として最終的に八幡浜などの市場から愛媛県産として出荷されるため、「伊予灘(下灘)の鱧」としてなかなか世間に認知されていないそうです。
瀬戸内海の海底は鱧のエサとなるエビ、カニ、タコなどが豊富で、この恵まれた環境で育った鱧は初夏と秋に上質な脂が乗り、あっさりとした上品な旨味があります。夜行性のため漁師は早朝3時に出航して、伊予灘を中心に周防灘、安芸灘の漁場に向かいます。
漁法は主に下灘独自の小型底びき網で「生きたまま水揚げすること」が特徴です。網を投入してから15〜20分程度で水揚げするという作業を何度も繰り返していきます。そして活きのいい鱧は船底の生簀に入れて市場に持ち帰ります。
極めて短時間で水揚げするため、身が傷つかず釣った鱧のようにツルツルしています。水揚げ量が多いため生簀に入らない鱧もあります。それらは漁師が船上で活締めして、内臓を取り出して、鮮度を保ったまま市場に帰ってくることも下灘の凄さです。
競りでは鱧が
勢いよく暴れまわる!
その場で活〆することで
最高の鮮度と品質を実現
下灘漁港では15時に競りが始まります。5分ほど前になると漁師や仲買人の目つきが変わり緊張感がピリピリと伝わってきます。
それもそのはず、市場内では威勢のいい声が飛び交い、獰猛な鱧が牙を向けながら勢いよく暴れまわる中で、仲買人は自分の目で見て鮮度のよいものを瞬時に競り落としていきます。
買い付けられた鱧は、市場の一角で生きたまま瞬時に活〆して血抜きが施されます。
これほど鮮度のいい状態で処理する産地は他になく、これが下灘の鱧が最高の鮮度と品質を実現している理由です。
北風鮮魚が活〆と
骨切りをした
高品質なブランドが
伊予灘の夕凪鱧
北風鮮魚は地元で仲買人と水産加工を手掛ける会社です。伊予灘の鱧のブランド化を牽引し、漁師と仲買人からの信頼が厚いことで知られています。下灘漁港で買い付けができるのは9名の仲買人だけ。その内の一人が北風鮮魚の買い付けを担っている宮部剛さんです。活魚の入ったカゴが競りにかけられると、瞬時に品質を見極めて買い付けていきます。
活〆をした鱧は北風鮮魚の加工場に運ばれて、職人たちがものすごい速さで身を開き、背骨や腹骨を取り除いていきます。その後、鱧特有の工程である骨切りを行い、パッキングして出荷されます。
「伊予灘の夕凪鱧」は北風鮮魚が厳選した高品質な鱧のブランドです。伊予灘の鱧の中でも自社で活〆して、骨切りまでを行ったこだわりの品です。当店では伊予灘の夕凪鱧に限定して、さらに一度も冷凍することなく工場直送でお届けします。商品は「活〆骨切り鱧」と職人が包丁で引いて作る「鱧しゃぶ用の薄造り」の2種類です。
活〆骨切り鱧は
調理方法を選ばず気軽に
食べられる
伊予灘の夕凪鱧を機械にて骨切りした後、ご家庭でも使いやすい500gパックにしています。湯引きして梅肉と一緒に食べる鱧落としや鍋の具材、フライや蒲焼きなどご家庭で様々な料理にお使いいただけます。お好みの幅に切ってからご利用ください。
活〆した最高鮮度の
鱧しゃぶは
熟練の職人が包丁で
薄造りに仕上げる
鱧しゃぶは1尾1.5〜2kg程度の伊予灘の夕凪鱧を丁寧に骨切りした後、1枚の身に2回包丁を入れる二枚引きと言われる技法で身を引き、見た目の美しい薄造りに仕立てたものです。
鱧の焼いたアラと昆布、瀬戸内海産の藻塩でとった特製の出汁が付きますので、玉ねぎや水菜、若芽などをご用意ください。
鱧を10秒ほど出汁にくぐらせて、身が白くなったら、ポン酢などでお召し上がりください。さっぱりとした味で、出汁が利いて、食べ飽きが来ない鍋です。しゃぶしゃぶの後はぜひ締めの雑炊をお楽しみください。
この薄造りを作れるのは北風鮮魚の職人の中でもわずか4名。1皿作るのに20分程度かかるため、最大でも1日に20皿しか作れません。一度も冷凍することなくすべて職人の手作業で作る一品です。
文:植竹伸行(食文化)
撮影:八木澤芳彦