宮崎の芋焼酎
ふだんのお酒を、
もっと美味しく!
芋焼酎おすすめ3本セット
《宮崎編》
芋焼酎に造詣が深い銀座の焼き鳥の名店「和味」種田和範さんと、月刊dancyuでの焼酎取材歴20余年の町田成一が、宮崎の芋焼酎をおすすめいたします。
岩倉酒造場の月の中、渡邊酒造場の黒麹旭萬年、黒木本店の橘(たちばな)を、飲み方とともにご紹介します。
うまいもん筆頭目利き人
月刊dancyu元編集長
文・町田 成一
撮影・八木澤芳彦
岩倉酒造場の月の中
豊かな甘味で魅了する、熱烈なファンをもつ芋焼酎です
香りのいい酒です。
岩倉酒造場の「月の中」は、20余年前の焼酎ブームを牽引した銘柄の一つ。今もコアな焼酎ファンから絶大な信頼を得ている銘柄です。
お湯割りにすると豊かで優しい甘味が花開き、その真価を発揮します。甘味と同時に、伸びのある深い味わいをもつため、水割りにしても、ソーダ割りにしても美味しくいただけます。
ほくほくとした蒸し芋や花のような香りもあるため、近年は女性ファンもふやしています。
蔵元の
藤本幹子さんです。
右が、現在の蔵元で杜氏でもある藤本幹子さんです。
「美味しい、と言ってもらえればそれでいい、と思って焼酎造りを続けています」と、藤本さんは語ります。
160年余の
歴史があります。
宮崎県西都市にある岩倉酒造場は、創業から160年以上の歴史をもちます。量より質を重んじた、伝統の焼酎造りを守ります。
原料は地元の
黄金千貫です。
月の中は岩倉酒造場の代表銘柄で、さつまいもは地元の黄金千貫、米麹は白麹です。ほかに、一年以上熟成させたくららなどの銘柄があります。
ソーダ割りも
おすすめです。
種田さんは、和味を開店させた約20年前から岩倉酒造場に通っているそうです。
「月の中は、ふくよかな旨みをもつ焼酎です。ぬるめのお湯でつくるお湯割りが最高ですが、ソーダや水で割ってもよく伸び、花のような香りも立ちますので、ソーダ割りや水割りでもおすすめしています」と種田さんは語ります。
渡邊酒造場の黒麹旭萬年
骨太で、濃厚で、香ばしい芋焼酎です
香ばしい酒です。
渡邊酒造場の黒麹旭萬年は、20余年前の焼酎ブームの際に彗星のごとく登場。当時の黒麹芋焼酎人気をつくった銘柄の一つです。
黒麹ならではの骨太なボディ、深く香ばしい余韻をもつ、濃厚なタイプの芋焼酎で、今も焼酎ファンを楽しませています。
種田さんのおすすめの飲み方は、ソーダ割りかお湯割りです。
さつまいもを
栽培しています。
さつまいもは自社でも栽培に取り組んでいます。
「極力、農薬を使わずに、土づくりから原料芋の栽培をしています。品種は、黒麹旭萬年に使うコガネセンガン(黄金千貫)を主に、ダイチノユメ、さらにはハロウィンスイートやシルクスウィートにも挑戦しています」と、渡邊潤也専務は語ります。
創業は大正3年です。
使う原料は、芋と米はオール宮崎。麦は創業者の出身地の愛媛に限定しています。黒麹旭萬年の麹に使う米は、7月末〜8月に収穫された新米の「夏の笑み」。新米のほうが脂の出が少ないため使っているそうです。
「オール宮崎県産にこだわりたいという思いから、米も宮崎市の農家にお願いしています。いずれは、自社で米づくりもやりたいと思っています」と、渡邊潤也さんは語ります。
風土が醸す味わいを。
渡邊酒造場の焼酎づくりの特徴は、蔵のある田野町でしか造れない味を出すこと。蔵付き酵母だけでなく、自家栽培をしている芋についている土をもろみに取り入れ、風土が醸す味わいを大切にしています。
黒木本店の橘
すっきりとした清涼感と軽やかさとエレガントさ
橘は伝統の銘柄です。
黒木本店は、麦焼酎の中々、芋焼酎の㐂六、樽貯蔵麦焼酎の百年の孤独などで知られる宮崎県の名門蔵です。自社の農業法人で栽培する農産物を使った焼酎造り。そして蒸留の際に出る廃液は緩効性有機質肥料として再生させ、地元の農地の土づくりに生かす、自然の恵みを自然に還す営みにも取り組んでいます。
黒木本店の創業は明治18年。「橘(たちばな)」は、地元向けの伝統的な銘柄です。飲み飽きせずに、ゆっくりと飲み続けられる味わいをもちます。
黒木本店の
黒木信作社長です。
「橘は、柑橘類のようなスッキリとした清涼感と軽やかな穀物の風味があります。水割りにすると、スズランのようなフローラル感のある風味と、フレッシュでタイトな味わいとなります。お湯割りでは、ほんのりと香ばしさと甘い風味が楽しめ、余韻に軽やかに抜けていきます」。
芋の無農薬栽培にも
取り組んでいます。
黒木本店では、自社で運営する農業法人甦る大地の会で焼酎に使う芋の栽培から行っています。主な品種はコガネセンガン、ジョイホワイト、タマアカネなど多種におよびます。農地は40haあり、そのうち15haは無農薬、ほかも減農薬栽培です。
仕込みは木桶です。
黒木本店では仕込みに宮崎県産の杉の木桶を使っています。
「黒木本店さんの真摯な焼酎づくりには敬意を抱いています。橘は、すっきりしたタイプをお好みの方に、ロックや水割りでおすすめしています」と、種田さんは語ります。黒岩土鶏との出会いも、黒木本店の前社長・黒木敏之さんの紹介だったそうです。
食事とともに。
ふだんの食中酒に、美味しい芋焼酎をお楽しみください。