健康意識の高い世代が注目する
赤身重視の黒毛和牛
愛媛あかね和牛
愛媛で生まれ愛媛の特産品で育つ
赤身重視のブランド黒毛和牛
愛媛県は古くは明治年間に伊予牛の産地として名声を博し、京阪神の大消費地に比較的近いという立地を活かして畜産業が行われてきた歴史があります。
現在、愛媛県には伊予牛
絹の味という霜降りが見事な和牛ブランドがありますが、愛媛あかね和牛のコンセプトは「赤身重視で脂肪のバランスの良い、柔らかく美味しくヘルシー」な和牛です。
愛媛で生まれ愛媛特産のかんきつと亜麻仁油を与えて育つ概ね24〜26か月齢の黒毛和牛で、牛肉取引規格の脂肪交雑基準であるBMS(霜降り具合)が12段階のNo.3〜9の黒毛和牛だけが「愛媛あかね和牛」を名乗ることができます。
黒毛和牛の三大血統「気高」
その優良系統から生まれた黒毛和牛
愛媛あかね和牛の誕生のキッカケは、「時代に即した赤身志向の牛肉を黒毛和牛でできないか」という知事の一言でした。
従来、和牛生産業界や研究者の中ではサシ重視でA5ランクの牛肉づくりを目指すのが常識だったため、まずは愛媛のブランド牛にふさわしい素牛の選定から始まりました。
黒毛和種には大きく3つの系統の流れがあります。但馬牛のルーツで兵庫の「田尻」を祖先とする系統、鳥取の「気高(けたか)」を祖先とする系統、岡山の「第6藤良」を祖先とする系統です。
現在流通している和牛は但馬牛の血統が主流ですが、体格が大きく、見た目のインパクトの割に性格が温厚な優良系統の「気高」に注目しました。
愛媛のブランドにふさわしい素牛だと期待が高まる中、「赤身志向」への餌の改良が始まったのです。
愛媛らしさを活かして
柑橘の搾り粕と亜麻仁油の餌で健康に育てる
愛媛県の特産品である柑橘には、ビタミンC、カロチン、クエン酸、カリウム、β-クリプトキサンチン、リモネンなどが含まれるため、みかんジュースを作る際の「搾り粕」を飼料に混ぜて脂肪を抑える取り組みが行われました。
また、健康油として知られる「亜麻仁油」にも注目しました。亜麻仁油を食べさせたところ、一般的な黒毛和牛と比べて、旨味成分であるグルタミン酸は約2.5倍、脂肪量は15%抑えることができ、目指していた肉質に到達したのです。
研究者たちは満を持して愛媛あかね和牛の誕生のキッカケを作った知事のもとへ試食を出したところ、「これだ!この肉」と期待以上の味わいに知事も絶賛したと言います。
愛媛県伊予郡の昔ながらの精肉店「篠崎畜産」
愛媛県伊予郡松前町の篠崎畜産は地元で40年以上愛される昔ながらの精肉店です。現在、愛媛あかね和牛は年間約200頭が出荷されており、その生肉のすべてを買い取っています。
篠崎畜産では塊で仕入れた肉を真空状態で2〜3週間冷蔵で寝かせてから切り分け、肉の水分を保ちながらも旨味を引き出す丁寧な仕立てを行っています。冷蔵便で手元に届いた時にドリップがほとんど出ていないことからも取り扱いの上手さがわかります。
赤身系の肉がうまい!
火を入れても柔らかく脂はサラッとしている
火を入れても中はしっとりと柔らかな食感で、脂が少ないので適度に歯ごたえもあり肉を食べている喜びを感じられます。特にモモ肉のような赤身主体の部位で愛媛あかね和牛の実力が発揮されると思います。ブロックでもスライスでも赤身の旨さが一味違います。
サーロインやロースの脂身もサラッとしていて、胃もたれするような脂とは少し異なります。
愛媛あかね和牛は「気高」という優良系統から誕生したことをお話ししましたが、この気高は融点の低いオレイン酸の割合が高くなるため、いわゆる口溶けのいい脂です。
愛媛あかね和牛は健康意識の高い世代が「これだ!」という赤身重視の黒毛和牛として今後、知名度が上がっていくと思います。
文:植竹伸行