2024年1月1日に発生した能登半島地震では養殖場のいかだや漁具が損壊しました。
さらに漁師の何名かは家が倒壊、納屋に寝泊まりしながら生き残った貝を育て 4月16日の初出荷を迎えたといいます。
生産地の能登島から能登半島に渡る際に利用する橋のうち一本はいまだに通行止めのままなど、依然、能登半島は復旧途上です。石川県のプロジェクト「能登のために、石川のために 応援消費おねがいプロジェクト」として、私たちも販売を強化してまいります。
下記は2023年に作成した記事です。
能登とり貝の魅力・産地の取り組みについて記しておりますのでこの機会にぜひご覧ください。
おいしさも大きさも別格!
能登半島七尾湾で育つ極上「能登とり貝」
季節限定のとっておきの
鮨ネタとして
珍重されるとり貝
江戸前鮨の貝と言えば、生で香りを楽しむ赤貝、職人技の煮具合でいただく鮑や蛤などが有名ですが、実はとり貝も古くから人気のネタです。天然ものは漁獲量の減少や活貝での配送が難しい繊細な貝です。お品書きやネタ箱に見つけた際は是非食べたいものです。
生のとり貝は天然は春先、養殖ものは5〜7月に出回ります。正直、天然ものより、しっかりと管理された育成とり貝(養殖)の方が価値があります。市場ではむき身が出回ることもありますが、生貝にさっと火入れをしいただくものは食感も風味も甘みも桁違いです。
能登半島七尾湾に流れ込む
栄養分と湾の形状が
極上のとり貝を育て上げる
七尾湾は川から海へと流れ出てくる栄養分が豊富なことから、トリガイの餌となる植物プランクトンの発生量が多い地域です。湾のおかげで栄養分が外海に出て行きづらいため、栄養をたっぷり摂って育ち、貝が大きく成長します。 また、波穏やかな海域であるため、波浪等の天候の影響が少なくトリガイ育成に適しています。
特産品のトリガイ復活へ
平成元年の約500トンをピークに、近年では数トンのレベルまで減少しています。原因は解明されいませんが、元々とり貝は高水温や貧酸素などの環境変化に弱く、全国的に豊凶の差が激しい貝です。先行して京都で育成(養殖)の技術開発が始まり、石川県でも漁業者等から安定供給を望む声が高まり、平成22年度から本格的な種苗生産試験と育成試験を開始しました。
この結果、平成26年度に種苗2.6万個を配布、翌年春には5千個を出荷しました。
※現在、全国で種苗の量産・育成技術を有するのは京都府と石川県のみです。
研究を重ね辿り着いた養殖技術
過去に出荷率が極端に低下した年がありました。夏場の高水温や低酸素が要因だったため、環境変化にある程度対応する技術を確立し、出荷率と品質向上(大型化)に現在も取り組んでいます。
- 種苗の量産技術の確立 → 殻長1㎝以上の種苗10万個配布
- 育成(養殖)適地探索 → 区画漁業権の設定が可能で、育成に適した海域選定
- 育成(養殖)方法 → 垂下水深、収容密度、箱替え間隔、床材選定
採卵後約2週間までの浮遊幼生飼育、採卵後約2週間以降の沈着稚貝飼育を行い、
飼育水の浄化、水換え(換水)方法、餌料培養等の改善を行いながら、生存率を高める手法を確立。
次に、適地探索のため養殖候補地として8カ所が挙げられました。(現在は4カ所に絞っている)
植物プランクトンの発生量が多く、水深10m以上の静穏域、また、他の漁業に影響が無い海域であることが求められました。
これら候補地で養殖試験を実施し養殖可能か判断。加えて水質調査(水温・塩分・プランクトン量・溶存酸素量)により養殖場所のチェックや養殖適地探索を現在も実施しています。
また、海水温、酸素量、プランクトン量を連続的に観測し、
育成に最適な水深を生産者へスマートフォンなどで提供する「安定生産支援システム」を活用・普及させ、IT技術を取り入れ安定出荷を目指しています。
2021年現在、生産者27名で構成される能登とり貝生産組合、石川県漁協、石川県(水産総合センター、水産課)が定期的に集まり、育成状況や技術の共有、販路開拓に向けたPR活動等に取り組んでいます。
最高の状態で届けるために
とり貝を最も美味しくいただくには、元気な活貝の状態で調理が基本です。 そのため、配送までに細かな工夫が施されています。
- 出荷時は、精密ろ過器でろ過した紫外線殺菌冷海水を使用し、活力を維持
- 衛生検査を実施(一般細菌・大腸菌・ビブリオ菌・ノロウィルス)
- 出荷規格を重量サイズ別に5区分(プレミアム・特大・大・中・小)設け、石川県漁協の集荷場で1個ずつ検品・一元管理している
酸素を詰めた袋に水を入れて配送します
貝をあけて掃除し、
軽くボイル後すぐ冷やして
水気を切り、活からせ
刺身でいただく
活貝をさばいて掃除をし、さっとボイルし氷水へあげ、水を切り、出す前にまな板に叩きつけ、身を活からせて盛り付けます。生でも食べられますが、少しボイルした方が、甘みをより感じやすいです。本当に美味しい状態で食べたいならば、こればっかりは自分でやるしかないと断言します。
(下記調理方法は一例です)
何と言っても刺身が旨い
身はふっくらとぶ厚く
噛むほどに甘みと香りが広がる
食べる直前にまな板に叩きつけると身が活かって見栄えがよくなる
これまで、豊洲市場に入荷するものをお届けできないか検討したこともありましたが、鮮度がとにかく持たないという理由で、実現が難しかった繊細な貝です。
2023年から当店と石川県の連携が始まり販売を実現しました。 届いた貝はとにかく元気で、中から身が躍り出るほど。これなら現地で食べるものと遜色ないでしょう!
鮨はもちろん、刺身にして山葵醤油や酢味噌も美味。漁師さん曰く殻のまま炭火で焼くのも旨いとのこと。
2024年の七尾湾での育成とり貝は、今年は約5万個の出荷を予定しています。
是非能登とり貝の魅力を味わってみてください。
㈱食文化 川口若菜