全頭 経産牛
放牧でダイエットさせ、無駄な脂肪は一切なし!
宮崎 鏡山牧場
放牧で脂のとれた
経産牛黒毛和牛のドライエイジング
写真は鏡山牧場の八崎秀則氏。もともと、広島で農業用の土壌改良資材の研究開発と販売を行っていた。
放牧が夢だった男は、後厄があけた2016年の1月1日、44才でついに宮崎県延岡市で牧場経営を始めた。
古い牛舎と土地を借りて2頭の牛から始め、現在では年間で80頭を扱う。
拠点は延岡市から借り受けた、標高645m、65ha(東京ドーム約13個分)の日豊海岸を望む高台だ。
霜降り至上主義の世に、赤身肉の価値向上を目論み、情熱と理論で挑む!
萩原章史も実食!うまいもんブログはこちら→
ドライエイジング設備を導入し
放牧肥育経産牛の旨みに
磨きをかける
2021年、熟成庫を6台導入し、熟成期間の見極めや、熟成庫内の温度管理や風向きの適性実証実験を行い、取り扱いを本格化させた。
一般的な手法では熟成に1〜2か月かかる間に菌が発生し、独特な熟成香が生まれ、歩留まりは半分ほどになる。一方、鏡山牧場が導入した機器では、味は熟成肉そのものだが菌が発生しないため熟成香はない。仕上がりもあっという間だ。ヒレやロースで1週間、ロインで2週間、モモで3週間。遠赤外線で熟成のスピードを早め、マイナスイオンの還元性で酸化や菌の増殖を防ぐ。そのため歩留まりは100%。自由水が15-20%飛ぶため、食せば、肉の旨みが凝縮しているのが理解されるだろう。
5か月の放牧で集中ダイエット!
絞られた体躯は健康の証
鏡山牧場では、食肉用に提供する牛はすべて経産牛だ。
2021年度で繁殖経営からは撤退し、放牧飼育にシフトした。
通常の肉牛の飼育期間が2年半程と短いのに対し、八崎氏が仕入れる経産牛は6〜8才。
経産牛は味が落ちると思われがちだが、そんなことはない。長く生きている分、味わいが濃くなるのが畜産業界では常識だ。
草が生え始める5月から、草が枯れてなくなる11月までを放牧期間と定め、牛の状態を見ながら5か月前後の飼養管理を経ている。この間、600㎏で仕入れた牛は540㎏にまで体重が減る。放牧で体を動かし、牧草を食すことで余分な脂が抜ける。放牧はまさに黒毛和牛にとってダイエット期間というわけだ。
八崎氏が目指すこと
今後、AIによる肉質判定器の開発をはじめる。これまでは勘と経験で行っていた「放牧に向く牛かどうかの判別」を機械化できれば、赤身の価値が見直された暁には、日本全国で放牧牛に取り組む農家の助けになると未来を見据えている。霜降り至上主義の卸市場の価値基準を変えたい、赤身の旨さを正しく判断される場を作りたい。その思いを胸に前進を続けるパイオニア精神に注目だ。
霜降りではないことが魅力
味が濃く、赤身が旨い!
エイジングによる変色部位はそのままお届け
脂はほぼついていません。
まさに赤身を楽しむ企画だ。
ドライエイジングにより変色した部分が1〜3㎜あるが削らず残してある。これも魅力のひとつとして味わっていただきたい。(もちろん食べられるが、普段はトリミングしミンチなどにする)
八崎氏の牛は、牧野を走りまわり無駄な脂肪がとれている。
脂はトリミングをしているのではなく、消えて存在しないのだ。
肉を焼いて食すと見事にさっぱりしている。
あまりにさっぱりしているので牛脂をつけたかったが、本当に無いので、
バターかオリーブオイルで焼いてほしい。
(将来的には牛脂の代わりに、バラ肉の脂をおつけすることを考えています)
肥育期間が長いため、少々筋はかたいので、食べる際気を付けてほしい。
咀嚼であごが引き締まり、脳が活性化しそうなほどだ。
「この肉、柔らか〜い!霜降りだ〜」の世界とは真逆の、赤身の肉をかみしめる喜びをぜひ。
(株)食文化 川口