青森の宝沼 小川原湖は美味の宝庫
今から三千年ほど前に誕生したと言われる小川原湖は宝沼と呼ばれる。三千年前と言えば縄文時代の後期。
世界的な低温化による海面低下で、内海と外海が繋がる部分が狭められ、日本で5番目の大きさの汽水湖は生まれた。
縄文時代から現在に至るまで、人は小川原湖の豊かな恵みを糧とし、宝沼と呼び、大切に守り続け、独自の食文化を育んできた。
小川原湖の周辺のいたる所で土器や貝塚が出土しているのが、その証。小川原湖の歴史は古代日本人と共に刻まれたものだ。
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小川原湖は全国でも珍しい、塩分濃度が低い微汽水性
日本の主要な汽水湖のなかで、最も塩分濃度が低い小川原湖は、独特な湖底地形が、独特な湖全体の汽水環境を作っています。
潮位が湖水位より高くなれば、高瀬川を通じて、太平洋の海水が遡上しますが、大部分の塩水は、高瀬川と小川原湖の接続域の、水深が非常に浅いマウンドと呼ばれるエリアを越えられずに、太平洋に戻る仕組みになっています。
この海水が真水と混じり合い、大部分が海に戻る場所は、ヤマトシジミの主要な産卵場となり、流入した一部の海水は密度が重いので、湖の下層に流れていきます。
この微汽水環境が様々な動植物を育み、汽水湖で唯一、マリモの生息も確認されています。また、海と小川原湖をつなぐ高瀬川の河口周辺は、米軍による立ち入り禁止区域となっているので、豊かな自然が保たれています。
小川原湖の表層塩分の濃度は海水の40分の1程度で、変動幅も少なく、汽水湖でありながら、海水の生物、淡水の生物の両方が生息する、独特の自然環境を形成しています。
805km2の小川原湖域ビオトープネットワークの要が、63km2の小川原湖であり、豊かな自然環境の連鎖が、豊かな小川原湖の恵みを生み続けます。
そこには、漁師のみならず、地域住民の環境保全の地道な取組みがあります。
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小川原湖でどんな魚介類が水揚げされるのか?
日本一の水揚げを誇るシラウオとワカサギ、しじみ、コイ、フナ、エビ、ウナギ、モクズガニ、ウグイ、ハゼ、・・そして、何とサヨリ(産卵の為に小川原湖に遡上してきます)
しじみとモクズガニは人口孵化施設を運営し、そこで生まれた幼生の放流もしています。しじみについては、150億個の幼生放流をしています。
小川原湖のしじみは凄い!大きい!日持ちする!うまい!
大きい!
小川原湖のしじみは大和しじみ。それも15mm以上の4年貝以上の大きなしじみです。小川原湖のしじみは『食べるしじみ』がコンセプトで、小さい貝はリリースします。
2Lサイズで18mm、3Lサイズで21mm以上です。3Lともなると、8年から9年掛かると言われています。
日持ちする!
小川原湖ではしじみ漁で機械の使用を認めていません。(例外:じょれんを引き上げる時だけ、機械動力を使っても良い)
手掘りでじょれんを引くので、しじみが傷つきません。機械でじょれんを引けば、短時間に水揚げを増やす事ができますが、強い衝撃でしじみが舌を噛み、それが原因で早く死んでしまいます。
小川原湖のしじみは乾燥しないようにして冷蔵庫で保管すれば、2週間は持ちます。
もちろん、冷凍する保存法もありますが、冷蔵で活きたまま2週間というのは、凄い生命力です。
うまい!
小川原湖は八甲田山の東側を湖流域に持ち、ミネラル豊富な水が大量に流れ込むので、しじみの餌となるプランクトンが豊富で、身が肥えて、とても美味なしじみに育ちます。特に夏の土用しじみと、冬の寒しじみが美味と言われています。
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厳しい資源保護への取組み
小川原湖の蜆漁操業は週5日間で、土曜・日曜・祝日を休漁日とし、年間操業日は約240日前後、1経営体 35kg/日と定めています。
• 冬場湖面が結氷しても操業します。=氷下曳(しがびき)操業=
じょれんの目が粗く、小さなしじみを獲らないのはもちろんですが、船上でふるいにかけ、小さいものは放流します。さらに、水揚げ後、入札前に再選別して、小さい貝、傷んだ貝、死んだ貝を取り、サイズ別に立派なしじみが入札に掛かります。
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小川原湖の名前の由来
アイヌ語の「廻り回る」という意味の「オカラ」「オカリ」「オカルル」から「オカラ」となって、その後「小川原」「小河原」の文字を当てられ、小川原湖と呼ばれたと言われています。広辞苑では[回す=廻す]・・・広く行き渡る。[回る=廻る]・・・働く、自由になる、行き渡る、利息が生まれる、利益になるなどの意味があります。
五千年ほど前、海水面が高く、今の小川原湖の二倍ほどの湾だった古小川原湾の西岸にあった大規模集落の遺跡が二ツ森貝塚(七戸町)です。
今よりも気候が温暖だった縄文時代、北海道や北東北は縄文人が豊かな文化と生活を営んでいました。
小川原湖はそんな時代から、人々に愛され、豊かな恵みを行き渡らせてくれる宝沼だったのです。縄文人のサステイナブルな営みを現代人は見習うべきだと思います。
その意味でも、小川原湖漁業協同組合は立派な漁協なのは間違いないです。
㈱食文化 代表 萩原章史
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