りんご王国 青森が世界に誇る りんご研究所
昭和3年(1928年)に遡る、青森県のりんご品種改良の歴史
つがる、陸奥、世界一、北斗、王鈴、夏緑、北の幸、東光、恵、メロー、彩香、北紅、星の金貨、恋空、春明21・・数々のりんご品種を開発してきた青森県のりんご研究所が、新たに送り出した品種は個性派ぞろいだ!
あおり24は酸味と濃厚な味が魅力の青りんご
あおり25は肉質の良さと酸味、そして病気に強い赤りんご
あおり27(千雪)は味と香りが良い上に、果肉が変色しない奇跡のりんご
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昭和3年(1928年)に始まる、青森県の品種改良の苦難の歴史は87年目
青森県のりんご栽培の歴史は古く、明治8年(1975年)、県庁敷地内に内務省から配布された苗木が植えられたのが最初です。
その後、明治後半から大正にかけ、病害虫が県下に広がり、多くのりんご園が潰れる状況となり、りんごの試験研究機関の成立が待望されることとなりました。
しかしながら、当時は主食である穀物の研究に国の資源が集中投入されていた為、りんごの研究は生産者からの寄付や、当時の黒石町からの土地や建築費の寄付に頼り、何とか昭和6年に青森県苹果試験場として設立された。
• 苹果とは西洋りんごの事で、昔からあった和林檎と区別する為の言葉です。
• 青森県苹果試験場がりんご試験場→りんご研究所に改名して現在に至ります。
品種改良自体は昭和3年(1928年)に青森県農事試験場でスタートし、1951年までは、紅玉(ジョナサン)・国光(ロールスジャネット)・旭(マッキントッシュ)・印度などの45品種を親とする188組合せ、5276本の交雑実生を育成する事から始まりました。
それから毎年、何千もの交配が続けられ、五千分の一、一万分の一が品種として残ると言われる、神のみぞ知るような偶然の結実を追い求める地道な努力の結果、ようやく、つがる・陸奥・世界一などの品種を世に送り出す事になったのです。
※青森県で開発された品種には青り(あおり)○とコード番号が振られ、後に品種名が名付けられます。ちなみに、あおり2は、後につがると名付けられました。
2つ異なる品種のめしべと花粉を交配し、取れた種から苗をそだて、りんごが成るまで早くて7年。その後、選抜を繰り返し、品種登録されるまでには、早くとも20年を要すると言われています。
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平成16年に品種登録された星の金貨は、甘く、多汁、食味良好、果皮が薄くて丸かじりもOK、さらに貯蔵性が良いという、非の打ち所がない新品種ですが、交配をしたのは大阪万博開催の年、昭和45年(1970年)です。何と35年も掛かっています。
(参考)日本初のりんご品種は印度
弘前の東奥義塾に招かれていた、米国宣教師ジョン・イングがクリスマスパーティーで塾生にりんごをご馳走した際、残った種を持ち帰って播いて生まれたりんごから選抜されたのが、印度(インド)とされています。
イングがなまって印度になったという説、イング氏の故郷がインディアナ州だったので、そのインディアナがなまって印度になったという説などがありますが、いずれにしても、多くの日本人が勘違いしているだろう、南アジアの大国「インド」とりんごの印度は何ら関係ないです。
奇跡のりんご りんご界の常識を変える あおり27 千雪
25年を費やした、これまでにない特徴を持つ千雪!果肉が変色しにくい
昭和58年(1983年)、金星とマへ7を交配して千雪の品種改良は始まりました。
• マへ7は5号(印度とゴールデン)×レッドゴールド
ただ、果肉が変色しないという特徴は偶然に見つかったもので、品種改良の目的では最初はありませんでした。
美味しいりんごを生み出す為の品種改良ですから、糖度と酸度のチェックは必ず行われます。その際、りんごをすり潰し、果汁を用いるのですが、ある日、測定後数時間経過しても、変色しないりんごがある事に研究者が気付き、さらに数年かけ、味と病害虫抵抗性を加味して選抜を行い、平成16年(2008年)、最初の交配から25年後に品種として登録されました。
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千雪が変色しにくいには理由があります!
通常、りんごの果肉は皮をむいたり、切ったりすると、茶褐色に変色します。これは果肉中のポリフェノール成分(クロロゲン酸やカテキン類)が酸化酵素ポリフェノールオキシターゼ(PPO)によって酸化される為です。
ところが、千雪は褐変基質のポリフェノール含量が低い上に、酸化酵素のPPO活性がほとんどないので、切っても、すっても、ほとんど変色しないという、りんごとしては、特異な性質も持つ事になりました。
これは毎年数千もの組合せを交配し、それを何十年も積み重ねた、数十万もの掛け合わせの偶然が生み出した、まさに奇跡的な性質です。青森県民の粘りと我慢強さが奇跡を起こしたのだと思います。
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千雪はそのままお弁当に!ジャムもジュースもおろし林檎も変色しない!
リンゴをお弁当やサラダに入れるなら、塩水につけるというプロセスが当たり前です。
その為、子供の頃から、カットしたりんごは少し塩っぱいものでした。
また、食べきれないりんごは変色し、どう考えても、また食べたいとは思えない、茶褐色の「命を失ったりんご」になる運命でした。
りんごを調理で使う場合、この褐色に変色するという特性が故に、加工段階でどうしてもビタミンCなどの添加物が必要となります。
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その点、千雪なら、無添加で変色しないジャムやジュースはもちろん、離乳食だって作れます。
こんな素晴らしい天賦の才に加え、甘みも十分で酸味は控えめです。堅さも程よく、ぱりっとした食感です。
青森県民の地道な努力と神が与えた偶然で生まれた千雪 りんごを一度に食べきれないお年寄りにも嬉しい新品種です。
25年の歳月(つまり、四半世紀)はお金では買えないです。これから生産量が増えて行くとは思いますが、まだまだ一般入手が難しい、幻のりんごです。
㈱食文化 代表 萩原章史
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